労災事故のご遺族の方へ
ある日突然発生した労災事故により、大切なご家族が亡くなるという取返しのつかないケースが発生してしまうことがあります。
突然、ご家族を失われたご遺族の悲しみは計り知れないものがあります。
しかし、被害者が亡くなられている以上、被害者が被られた損害は、ご遺族の方々が代わりとなって公的労災給付の申請と共に勤務先への損害賠償などを請求するしかありません。
そのため、ご遺族は、ご家族を亡くされた悲しみのなか、事故直後からの入院・治療に加え、葬儀や相続手続き、警察・労基署との連絡に追われるとともに、損害賠償請求の手続きを行うことになります。
また、このような重大事故に関しては、事故直後の対応が重要である一方で、専門的知識が要求されます。
そのため、重大事故の場合こそ、早い段階で労働災害に精通した弁護士に相談・委任すべきケースと言えます。
従って、治療中や入院中でも、労災給付の申請前でも結構ですので、できる限り早い段階でご相談下さい。当事務所が無料相談で対応いたします。
1.政府による補償
ご遺族の方の労災補償の内容は以下の5つになります。
①遺族特別支給金300万円(定額)
②遺族補償年金給付基礎日額、遺族の人数などによって決まります
③遺族特別年金
④葬祭料
⑤労災就学援護費
・会社に対する損害賠償請求も可能です。
さらにご遺族の方は会社に損害賠償を請求することができます。
被害者のご遺族が会社に請求できる損害賠償は大きく分けると下記の4つになります。
記
・死亡事故の損害賠償の4分類
①死亡するまでの怪我による損害
:救助捜索費、治療関連費(付添費用、交通費などを含む)、休業損害、入通院慰謝料など
②葬儀費
:戒名、読経料、葬儀社への支払いなど
③慰謝料
:被害者および各遺族個人に対する慰謝料
④逸失利益
:本人が生きていれば得られたはずの収入
死亡事故の損害賠償の4分類、①死亡されるまでの損害
この金額については、損害賠償金の計算方法と同様ですので、そちらをご参照下さい。
死亡事故の損害賠償の4分類、②葬儀費
葬儀費は葬儀そのものにかかった費用に加え、49日の法事の費用、仏壇購入費、墓碑建立費が若干認められる場合もあります。
原則としては150万円程度が認められますが、当該金額を下回る場合には、実際に支出した金額とされています。
香典返しは損害には認められませんので注意が必要です。
死亡事故の損害賠償の4分類、③慰謝料
被害者が死亡された場合の慰謝料には、大きく分けて2つの慰謝料があります。
1つ目は、被害者本人の慰謝料、2つ目はご遺族の慰謝料です。
・裁判所基準の慰謝料(被害者本人)
ケース 慰謝料金額
一家の支柱の場合 2,800万円
母親、配偶者 2,500万円
その他の場合 2,000~2,500万円
※近年の裁判例の分析で増額傾向にあります。
・ご遺族の慰謝料
判例ではご遺族の固有の慰謝料として100万円~600万円までみとめられたケースがあります。
※遺族の固有の慰謝料の金額は、被害者本人の慰謝料額と総額を調整される傾向がありますのでご注意ください。
死亡事故の損害賠償の4分類、④逸失利益
死亡事故の逸失利益とは、労働災害事故によって亡くなられた被害者が、労働災害事故がなければ将来得られたであろう収入の推計のことです。
例えば30歳の男性サラリーマンの場合、67歳までの残り37年間で得られたであろう収入の推計が逸失利益となります。
・死亡事故による逸失利益の計算方法
逸失利益=❶基礎収入(年収)×(1-生活控除率❷)×(就労可能年数❸に対するライプニッツ係数)
① ❶基礎収入(年収)
・給与所得者の場合
原則として、事故前1年間の現実の税込み収入額(本給、諸手当、賞与、昇給、退職金)を基礎とします。資料として、源泉徴収票、給与明細、確定申告書などが必要となります。
若年労働者(概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり、賃金上昇の可能性等を考慮して、実際の支給額よりも高い基準である全年齢平均の賃金センサスが用いられる場合があります。
② ❷生活費控除率
死亡逸失利益の算定の際には、死亡により不必要となった生活費が控除されます。
しかし、現実にかからなくなった生活費を明らかにすることは困難であるため、生活費控除率というものが用いて計算されます。
生活費控除率の具体的数値は下記の通りです。
1.一家の支柱
・被扶養者1人の場合:40%程度
・被扶養者2人以上1の場合:30%程度
2.女性(主婦・独身・幼児を含む):30%程度
なお、女子年少者の逸失利益において、賃金センサスの全労働者の全年齢平均賃金が基礎収入とされた場合には、生活控除率は40~45%とされている。
3.男性(独身・幼児を含む):50%程度
4.年金部分
年金部分についての生活控除率は、通常よりも高くなることが多いとされています。
② ❸就労可能年数
原則として、67歳までを就労可能年数とします。しかし、67歳を超える者については、平均余命の2分の1とされます。
また、67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる者については、平均余命の2分の1とされます。
未就労者の就労の始期については、原則として18歳とされ、大学卒業が前提とされる場合には大学卒業予定時とされています。
年金の逸失利益を計算する場合は、平均余命までの期間が逸失利益の算定期間とされます。
これは、年金については、就労の有無に関わらず受給可能であることを根拠としています。