労災保険の仕組みと実情
補償が十分でないことも
労災に遭ったら「労災保険」から支給を受けられるから安心
あなたはそのように考えているかもしれません。
しかし労災保険からの支給は「万全」ではありません。
補償が不十分な場合、勤務先の企業へ不足分の支払いを請求できる可能性があります。
今回は労災保険の仕組みと実情について、弁護士が解説します。
1.労災保険の仕組み
労災保険は、労働者が労働災害に遭ってけが、病気、障害を負ったり死亡したりしたときに補償を受けられる保険です。
雇用者が労働者を雇用するときにあらかじめ労災保険に加入しておき、いざ労災が発生したときには労災保険から労働者へとさまざまな給付金が支給される仕組みです。
事業者が人を1人でも雇用するときには、必ず労災保険に加入しなければならない義務があり、加入していなかった場合には後に過去に遡って保険料と追徴金が課されます。
また勤務先が労災保険に加入してくれていなかったケースでも、労働者が労災に遭ったら労災保険を利用できます。
加入者による義務の懈怠による不利益を労働者に押しつけるべきではないからです。
労災に遭ったら、迷わず労災保険の申請をしましょう。
2.労災保険の支給内容
労災の主な支給内容は以下の通りです。
療養補償給付
病院でかかる治療費の支給を受けられます。必要な分は全額労災保険から支払われます。
休業補償給付
労災で仕事を休んだときの休業補償です。金額は平均賃金額の8割、支給は休業4日目からとなります。
障害補償給付
後遺障害が残ったときの補償です。後遺障害の等級によって金額や支給方法が異なります。
傷病補償年金
治療開始から1年6か月が経過しても治癒しておらず重い障害が残っている場合に支給される年金です。
介護補償給付
介護が必要になったときの給付金です。
葬祭費
労働者が死亡したときの葬祭費用です。
遺族補償給付
労働者に遺族がいた場合には遺族へ年金や一時金が支払われます。
3.労災保険の実情:補償が不十分なケースがある
労災保険からの補償は、労働者に発生する損害の全額ではありません。
たとえば休業補償は休業4日目、賃金の8割の補償です。
当初3日目までの補償や賃金の2割の補償は受けられません。
後遺障害や死亡事案の「逸失利益(将来得られるはずだったのに得られなくなった収入)」や葬儀費用なども一部しか支払われません。
また慰謝料は一切支給されません。
労災保険を受け取っても、本人や遺族にとっては補償として不十分なケースが多々あります。
4.不足分は企業へ請求できる可能性がある
労災保険からの支給で不足する分があれば、企業へ直接請求できる可能性があります。
まず業務災害の場合、休業3日目までの補償は企業に請求できます。
また労災発生について企業側に責任がある場合には、「損害賠償請求」として慰謝料や不足分の逸失利益、休業補償、葬儀費用などの負担を求めることが可能です。
労災に遭い「どのくらいの補償を受けられるのか?」と不安な思いをされているなら、一度お気軽に弁護士までご相談下さい。