労災事故の補償と注意点|2022最新版
労災事故に遭った場合には労災保険の補償を受けられるものです。
更に、会社など事業主側に落ち度があれば、安全配慮義務違反として損害賠償請求も可能です。
しかし労災保険が支給されない場合や会社が賠償を拒絶する場合などもありますので注意が必要です。
今回は労災事故で労働者が受けられる補償内容と賠償内容の注意点について、弁護士が解説していきます。
1.労災事故の補償
労災事故に遭った場合、以下のような補償を労災保険から受けられる可能性があります。
1-1.労災保険
事業者は、人を一人でも雇用すると必ず労災保険に加入しなければなりません。
労災に加入しないのは違法行為です。
そして労災が発生したら、労働者は労災保険から以下のような給付を受けられます。
療養補償給付…治療費
休業補償給付…休業期間中の賃金補償
障害補償給付…後遺障害が残った場合の補償
介護補償給付…介護費用
傷病補償年金…1年6か月経っても完治しないときの年金
遺族補償給付…労働者が死亡したときの遺族に対する補償
葬祭費…葬儀費用
1-2.事業者側からの補償
労災保険だけでは労働者に発生する損害の全額は補填されません。
勤務先によっては労災が起こったときに、従業員に補償を行う制度を設けているところがあります。
たとえば休業期間中の給料が一部支払われたり、一時金などの支給が行われたりするケースがあります。
勤務先によって制度の有無や内容が異なるので、労災発生時には確認すると良いでしょう。
1-3.事業者側に対する損害賠償
労災発生について会社に責任がある場合、会社に対して安全配慮義務違反に基づいて損害賠償請求できます。
会社には雇用契約にもとづき、労働者に安全で適切な労働環境を提供する義務(施設管理責任、安全教育実施、安全装置の設置等)があります。
それにもかかわらず不適切な環境で働かせて労災事故を発生させると会社に損害賠償責任が発生するからです。
労災保険では不足する慰謝料などの補償を、企業側に求めることが可能です。
1-4.身分保障
労災に遭って仕事を休む場合、休業期間中に解雇されることはありません。
休業明け30日間における解雇も禁止されています。
2.注意点
2-1.労災保険による補償は万全ではない
まず労災保険による補償は万全ではありません。
そもそも労災申請をしても労働者性や業務起因性などが認められないとして労災が認められない可能性もあります。
認められたとしても、発生した損害の全額が支払われるわけではありません。
※治療費などは症状が固定するまで負担される場合もありますが、給与の補償や後遺障害についての補償は裁判基準よりも少なく、傷害や後遺症の慰謝料などは労災からは支給されません。
2-2.企業が労災隠しする可能性
労災事故が起こったら事業主側は労基署へ報告しなければなりません。
しかし労災事故発生をきっかけに長時間労働や残業を命じるために必要な36協定を締結していないなどが発覚するおそれがあるので、「労災隠し」をする事業主・会社・企業も多数あります。
2-3.事業主側である会社が損害賠償を拒む可能性
事業主側に責任があり労働者が損害賠償を求めても、「適切な安全施策を講じていた」として賠償責任を否定し慰謝料などの支払を拒絶する会社が多くあり注意が必要です。
また、不況や会社の経営が悪いことを理由に「見舞金」として裁判基準での賠償金よりも著しく低額な金額を提示する場合もあります。もっとも、勤務先自体に支払する資力がない場合でも、現場を管理していた元請会社があれば、勤務先と合わせて元請会社への損害賠償の請求をすることも可能です。
労災保険や事業主側の対応に不服や疑問がある場合には弁護士が相談サポートや委任を受けて代理での請求もいたします。
労災保険への申請、異議申立(審査請求)、会社への損害賠償請求など、弁護士が対応すればきちんと補償を受けられるようになるケースも少なくありません。
一人で悩まずに弁護士までご相談下さい。