落ちてきたものに当たった(飛来)事故

 

「落ちてきた(飛来してきた)ものに当たって怪我をした」という事故は、きわめて頻繁に発生し、重症化してしまうケースも枚挙にいとまがありません。

 

建設業や製造業、運送業などの現場で特に顕著によく見られる事故の態様です。

 

●クレーンでつり上げた鋳型から木型を取り出す作業中、鋳型が崩落して死亡

 

●床上用研削盤を用い研磨作業を行っていたところ、といしが割れ、その破片が胸部を直撃

 

●プレス機械で作業中、加工品を上型から外すために置いた安全ブロックが飛来し死亡

 

●トラックの荷台から廃材を荷降ろし作業中、崩れ落ちた廃材の下敷きになり死亡

 

●作業中の飛び跳ねの異物との衝突

 

上記のように、高い位置からの落下物が直撃し、重大な怪我を負ったり、お亡くなりになる事故が後を絶たないという現状があります。

 

会社、元請けに対する損害賠償が可能なケースも

前述の通り、重症化しやすい事故ですから、相応の補償(数百万円から数千万円)がなされることが少なくありません。

 

また、労働現場の管理責任について「安全配慮義務違反(社員が安全で健康に働くことが出来るように配慮する義務)」や「不法行為責任(事故の原因が企業の活動そのものを原因とするような場合や、労働現場の建物・設備に危険があった場合などに認められる責任)」などを根拠として会社、元請けに対して多額の損害賠償請求が認められるケースも多いのです。

 

しかしながら、このことを知らずに、労災保険からの給付のみを受け取って終えてしまっている方が多いのもまた事実です。

 

他の従業員の失敗・過失により怪我を負った賠償はどうなる?

「同じ現場で作業していた方が落としたものに当たった」というケースはとても多くあります。このような場合、責任は誰にあるのでしょうか。

 

勿論、落としてしまった本人に落ち度はあります。しかし、労災事故の現場における「責任」は、使用者(=会社)に対して追及され、損害賠償が行われることがほとんどなのです。

これを「使用者責任」(民法715条)と呼び、会社に対して損害賠償を行う際の根拠となります。

 

横浜地方裁判所平成19年6月28日

多摩川沿いの堤防の除草作業(以下「本件作業」という。)に従事し,刈り払われた雑草を熊手を用いて集める作業に従事していたところ、周囲にいた作業員が用いていた刈払機が石様の異物を飛散させ、これが左眼に当たって失明するに至った。

 

17歳、後遺障害等級8級1号に認定

 

安全配慮義務違反の概要

 

本件作業に伴う事故の危険性については説明されておらず、ゴーグルの着用や刈払機による作業場所との間に確保しておくべき距離などについて指示を受けないまま本件作業に従事していた。

 

安全確保のために注意すべきこれらの点については,教育や安全管理ミーティングなどの機会に周知徹底すべきであったのにこれを怠っていたと認定された。

 

損害額について

損害額合計額4989万5408円

(1)  治療費(請求額20万5550円)  20万5550円

(2)  入通院交通費(請求額9960円)  6160円

(3)  入院雑費(請求額2万5500円)  2万5500円

(4)  装具費(請求額446万6000円)  134万7987円

 

平均余命(簡易生命表によれば17歳男子は約60年)の間、半年毎に義眼を洗浄し、3年毎に義眼を作り替える必要があり、義眼の洗浄のためには1回5000円,義眼を作り替えるためには1回19万3000円の費用を要する

 

(5)  休業損害(請求額143万2000円)  143万2000円

(6)  逸失利益(請求額4563万1899円)  3777万8211円

 

中卒男子労働者の全年齢平均の年収額459万8600円の収入を得ることができたにも拘わらず、その45パーセントを失ったもの

 

(7)  慰謝料(請求額1408万5000円)  910万0000円

入通院に対する慰謝料は80万円,後遺障害に対する慰謝料は830万円

 

過失相殺

  なし 

 

 

 

会社・元請けに対して過失を追求するために

先述の「使用者責任」以外にも、労働災害においては様々な角度から「事故を起こさないために十分に被害者の安全に配慮したのか」という検証が行われます。

 

しかしながら、会社や保険会社とのやり取りはとても煩雑で被害者や家族の負担になるものであり、初めて労働災害に遭われた方がそれを行うのは困難をきわめますし、事故態様に関する証拠資料の収集も容易ではありません。

 

また、時間の経過とともに証拠資料が失われてしまう恐れもあります。

 

損害の計算も容易ではありません。

 

どういった損害を請求できるのか、慰謝料がいくらなのか、仕事が出来なくなったことに対する補償の計算はどのようにするのか、公的な労災補償給付等との差し引き計算方法や、将来の介護費を請求できるのか否か金額の算定など専門的知識が必要です。

 

ほとんどの方が労働災害に遭うことや損害賠償の請求を行うこと自体初めての経験ですから、ご自身ではよく分からないことが多く、どのように交渉を進めればよいか悩ましく、お忙しい中で非常にストレスに感じられることと思います。

 

また、会社側も「労働者(=あなた)」に過失があったのだから賠償額を減額するべきだ」というように、「過失相殺(割合)」などの主張をしてくる場合が少なくありません。そのような時にも、弁護士はあなたの味方となり、適切な主張と証拠の収集を行います。

 

当事務所の弁護士は、労働災害の賠償についても過去の裁判例やガイドラインの研究を重ねており使用者側との複雑なやり取りも得意とするところですから、ご依頼いただくことでこれらを一挙に担い、スピーディーに進めることができます。

 

落ちてきたものに当たった(飛来)事故に遭われた方やご遺族の方は、是非一度ご相談ください。